昨日ある番組で、いま中国市場を中心とする「アートバブル」をテーマに放送していた。本当は見たくもなかったのだが、仕事中にもかかわらずつい最後まで見てしまった。見終わってやはり何かやり切れ無さを感じる後味の悪い気分になる。現代アートにスポットが当たり出した昨今、才能あるアーティストがどんどん売れていくのは喜ばしい事だし、アートとビジネスはもっと深くかかわるべきだとも思っている。アーティストには私の代わりに苦しみ抜いて欲しいと願いつつ、同時にその作品に見合う対価を手に入れて欲しいと思うからだ。数年前に村上隆のフィギュアが数千万で落札された時には私まで「してやったり」と嬉しくなったりもした。しかしなんだ正直言って最近のような転売目的の現状を見ていると心底悲しくなる。株とか不動産とかと同じ感覚でアートをも投機の道具になっている現状にだ。いや、もっとも株に投資する自体が悪いこっちゃない。余剰資金を共感した会社の将来性に信託する事は、身の丈を超えても蓄財し社会に循環させない貧乏人よりはよっぽどまともな話だ。気に入らないのはデイトレーダーしかり、その先の「カネ」に群がる守銭奴たちのその姿にである。一昔前、ある大手製紙会社会長が所蔵しているゴッホの“ひまわり”を「俺が死んだら一緒に焼いてくれ」と言いだした事に、世界中のバッシングを受けた事があった。この恥さらしな言動を言いのけてしまう彼のようなタイプの人間が守銭奴に多い事はたぶん間違っちゃいないだろう。世の中は「勝ち組/負け組」などとくだらない格付けを好むが、せめて数億、いや数千万円の芸術を所有しようとする君たちには、日頃から基金などの慈善事業に興味を持っている人であって欲しいと願うのは大きなお世話だろうか。モンナカの食糧倉庫を懐かしく思い出しながら、「アートはブルジョワの物だ」と、いつか誰かが言ったその言葉を、今さら噛みしめている。