一昨日渋谷Bunkamuraオーチャードホールへ、パリ・オペラ座バレエ団「ル・パルク」全3幕を鑑賞しに行った。パリ・オペラ座バレエ団といえばクラシックバレエ界の中でも最も古い歴史を持ついわゆる老舗中の老舗である。しかも今回はコンテンポラリーということなので、いつにも増して期待に胸を膨らまして会場へ足を運んだ。初演は94年と言うことだが、コンテンポラリーバレエと呼ばれるモノを観るのは実は初めてなので少し緊張もした。だがしかし、休憩なしの全3幕は素晴らしくあっという間に時間が過ぎ、終演まで飽きることなく、心の舌鼓を打ち鳴らしながら完食。
舞台のアウトラインはこうだ。18世紀頃のフランス庭園を舞台に男女が織りなす恋愛ゲームを、全編に流れるモーツァルトの優雅な音楽を背景に、シンボリックにそしてスタイリッシュに描いていく。物語の初めに展開される誘惑のゲーム(第一幕)はやがて肉体のすべてをぶつけ合う激情へと移り変わり(第二幕)、そして最期は儚く切ないまでの情愛へと昇華されていく(第三幕)。男女の心理の奥底を覗き込むようなスリリングでエロティックな演出は、言葉を取り除いていく表現者の最も才が光るものだった。とくに第三幕クライマックスの包容しながらクルクルと宙を舞うようなパ・ド・ドゥは息をのむ美しさで、一番心に残るシーンだった。また、舞台合間に黒子のように登場する「庭師」の存在は物語をより深く意味付け、全体のコアを凝縮させる重要な役割であることも付け加えておきたい。
興奮さめやらぬ私は帰宅後、どこかにやってしまったピナ・バウシュ「カフェ・ミュラー」を収めたビデオを部屋のあちらこちら引掻き回しながら2時間あまり探したのだが見つからない。誰かに貸したのかもしれないが思い出せない。今日もう一度観れないのが悔やまれてならぬ。
次にピナ・バウシュ日本公演のある時は必ず行くと心に決めた。