長々と書き連ねた後にこう言っちゃ何だが、自己と他者の定義は大変不確かで曖昧なモノ。「愛」や「平和」以上に疑う価値は十分にある。ひょっとすると人が人と繋がる本質はここで語っている様な風景じゃないのかも知れない。人によって導き出されるモノは違ってくるのは当然だとしても、人との関わりの中でしか自己は存在できない事は確かなようだ。出会いはそんなに多くもないかも知れないが、これから先も「受信」するアンテナはいつでも磨いておこうじゃないか。まずは身近にある「バトン」を見落とさないように。
おしまいに、今回の巡業で学んだ事とリンクするような感覚を、見事に表現している大好きな作品を思い出したので是非紹介したい。あの前衛芸術集団「フルクサス」のなかでも偉才を放つオノ・ヨーコの作品で、1966年に発表された「天井の絵」というのがそれだ。ジョン・レノンと出会うエピソードでも有名なこのインスタレーションは、ギャラリー中央に整然と置かれた白いハシゴを観客が昇って行き、昇りきった先に吊り下げられた虫眼鏡を使って、天井に小さく書かれている言葉を観客自ら覗くといった大変シンプルな作品だ。この作品は初めて触れたその時より、後からジワリとやってくる何とも言い様のない安堵感を味わえる。そしてイデオロギーの違いで憎しみ合い殺し合う戦争といった真逆の状況をも想起させ、受け入れる事の大切さをイメージさせる素晴らしいインスタレーションだ。その天井にある言葉とは・・・「YES」。
そこに記された、たった三文字のメッセージと比較すれば、
ここの小難しい話など、もうどうでもよくなる。
バトン その1
バトン その2
バトン その3
バトン その4
バトン その5
バトン おわり