リッチは未来へ問題を先送りしています。このまま利子が膨れ上がって行くとしたら計算上、遅かれ早かれだいたい二世代後に経済的な破滅か地球環境の崩壊かのいずれかへと突き当たります。それが根本問題です。信じる信じないの問題ではなく誰でもコンピュータがあれば計算できることです。このシステムから利益を得ているのはほんの一握りです。いまのアメリカでは人口の1%がその他の99%よりも多くを所有しています。つまり一方でどんどん貧しくなる国があり自然環境も奪われ続けています。その一方で少数の者達が法外な利益を吸い上げています。それが今の経済システムです。〜マルグリット・ケネディ(エコロジー建築家)〜
古い文化が残る世界のどの街でも、その中心には聖堂や神殿があります。そこから秩序の光が発していました。今日では大都市の中心には銀行ビルがそびえ立っています。私は「ハーメルンの笛吹き男」をヒントにした最新のオペラでお金があたかも聖なる者のように崇拝され祈りの対象となっている姿を描きました。そこでは「お金は神だ」とまで誰かが言います。何故ならお金は奇跡を起こすからです。お金は増えしかも永遠不滅という性質があります。しかしお金というのは神とは違って人間が作った物です。自然界に存在せず純粋に人間によって作られた物がこの世にあるとすれば、それはお金です。だから歴史を振り返るという事が重要なのです。
私が知る限り、それは「シルビオ・ゲゼル※」から始まりました。その事を真剣に考えた最初のひとりです。ゲゼルは「お金は老化しなければならない」というテーゼをたてました。さらに「お金は経済活動の最後の所では再び消え去るようにしなければならない」とも言っています。つまり例えて言うならば、血液は骨髄で作られて循環し、役目を終えれば排泄されます。循環することで肉体が機能し、健康が保たれているのです。お金も経済という有機組織を循環する血液のようなものだと主張したのです。「雇用、利子、貨幣の一般理論」(ジョン・メイナード・ケインズ)の中でケインズは後世の人々はマルクスよりはゲゼルの精神により多くのものを学ぶであろうと記述している。
※シルビオ・ゲゼル(1862~1930)ドイツで生まれアルゼンチンへ移住。貨幣制度と社会の秩序には深い相関関係が存在すると考える「自然的経済秩序」(1916)出版。既成政党がイデオロギーの主張ばかりで明確な経済綱領を欠いていることを批判し自由貨幣(減価する貨幣)と呼ばれる新たなお金の考え方を提案。
【エンデの遺言】(1) ~根源からお金を問う~
【エンデの遺言】(2) ~金利と無縁な貨幣~
【エンデの遺言】(3) ~ゲゼルの老化するお金~
【エンデの遺言】(4) ~貨幣の最も重要な機能~
【エンデの遺言】(5) ~時は金なり~